2013/07/08
米国の金融緩和縮小観測香港不動産市場に影響...!!香港では米国より早めに利上げされる可能性があり、不動産業界では今年下半期の住宅相場についておおむね10%前後の下落が予測されている。
米国の金融緩和が縮小するとの見方が強まっていることを受け、曽俊華(ジョン・ツァン)財政長官は6月21日、市民に不動産リスクに対する注意を呼びかけた。香港では米国より早めに利上げされる可能性があり、不動産業界では今年下半期の住宅相場についておおむね10%前後の下落が予測されている。昨年から不動産市場に対して打ち出されて来た一連の過熱抑制策による効果も見られ、不動産代理業界では20%が失業するなどの影響も指摘されている。業界からは特区政府に抑制策の撤回を求める声が高まっているが、曽長官は抑制を緩和する意思のないことを示した。

住宅価格は年内10%下落

 曽長官は記者会見で「米国が利上げサイクルに入らなくても市場の利上げ観測が香港の不動産市場に影響を及ぼす」と述べ、米国より早く利上げとなる可能性を示唆。住宅を購入する市民は財務状況と返済能力を熟慮すべきと警告した。抑制策撤回については「依然バブルリスクがあるため時期尚早」と指摘した。その直後の週末に当たる6月22~ 23日の住宅市場では中古物件の取引が減少に転じ、前週に比べ50%減となった統計もある。

 米国の利上げ観測で不動産業界や識者の多くは下半期に住宅価格が大幅に下落すると予想。中原地産は全体で10~15%下落、高級住宅は10〜20%下落と予測し、通年の取引量は年初に予測した12万件から8万5000件に下方修正、1990年以降で最低を記録するとみている。美聯物業は5~ 10%、利嘉閣地産は10%以上、ジョンーズ・ラング・ラサールは20~30%、シュローダー投資管理は30~50%とそれぞれ下落を予測している。

 昨年10月や今年2月に打ち出した抑制策、それに3月に多くの銀行が住宅ローン金利を引き上げたことで市場は徐々に冷却化してきた。不動産評価や市場統計作成などを行う特区政府差餉物業估価署が発表した4月の住宅価格指数は237・9で、3月から0.67%下落。2012年2月から13カ月連続で上昇していた同指数は3月から2カ月連続で下落した。ただし返還バブルのピークである1997年10月の172・9を37%上回っており、まだ高い水準にある。

 抑制策の効果で中国本土住民をはじめとする域外住民と企業名義による住宅購入は顕著に減少した。特区政府財経事務及庫務局が立法会に提出した資料では、第1四半期の住宅取引は1万8700件で、09~12年の四半期当たり平均の2万2000~3万9000件に比べ20~50%減。域外住民と企業名義による取引は801件で、昨年の四半期当たり平均の3078件から74%も減少した。2000万ドル以上の高級物件の取引は昨年通年で2803件だったが、今年第1四半期は429件にとどまった。

 中原地産の統計では、1200万ドル以上の新築住宅物件に占める本土住民の購入件数は昨年第1四半期には45.9%を占めていたが、今年第1四半期には18・3%にまで縮小した。

 香港島の代表的な集合住宅である太古城では先ごろ、ある物件が市場価格より2割安い500万ドルで取引され、成約額と1平方フィート当たりの価格は太古城で今年に入って最低を記録。利嘉閣地産の統計では家賃相場が2カ月連続で下落するなど抑制策の効果が見られているが、今のところ住宅価格の大幅な下落にはつながっていない。



抑制策の撤回求める声も

 住宅政策を検討する長遠房屋策略督導委員会(長策会)は6月20日、今後10年の住宅供給目標を決めた。特区政府運輸及房屋局の張炳良・局長は会議後の記者会見で、人口の変化などを考慮した最新の推計では13/14年度から22/23年度の10年間に供給が必要な住宅は44万7000戸と発表。うち民間デベロッパーによる供給が19万戸、賃貸型公共住宅が22万戸、分譲型公共住宅が約3万7000戸。1年当たり平均4万4700戸となる。

 長策会はこの推計を採択し、8月に提出する報告書に目標として盛り込む。97年に董建華・元行政長官が打ち出した8万5000戸に次ぐ特区政府による第2の住宅供給目標となる。梁振英・行政長官の就任時の公約では16年までの住宅供給量は年間3万5000戸(民間2万戸、公共1万5000戸)となっているため、今後3年間は需要に比べ供給は約3万戸不足することになる。

 新築住宅市場では4月末に「新築住宅販売条例」が施行された。これは購買意欲をあおるなどで住宅価格をつり上げる販売方法に歯止めをかけ、住宅市場の過熱を防ぐのが狙いだった。だが新世界発展の鄭家純・会長は、一連の抑制策にもかかわらず住宅価格が下がらないのは同条例が主因と指摘。同条例の要求が細かすぎるためにデベロッパーの物件売り出しが緩慢となり、供給不足で住宅価格が下落しないという。デベロッパーは数百ページの物件説明書を作らねばならず、不備があれば刑事責任を問われる恐れもあり、新築物件の売り出しは新規株式公開(IPO)より難しいとの声もある。このため鄭会長は同条例を簡素化すべきと提案した。

 同条例の施行から1カ月に売り出された新築の集合住宅物件はわずか3カ所で、取引量は67戸にとどまった。新築物件の1カ月の成約数としては過去最低ともいわれる。売り出し予定物件は7カ所だったが、物件説明書の不備など新条例の要求を満たせず、多くが売り出しを延期した。

 抑制策の弊害を訴える声はほかにもある。不動産代理8社で組織される「地産代理業界連席会議」は、不動産市場抑制策の撤回を求めて7月7日にデモ行進を行う予定だ。5月の不動産取引は5288件だったため、不動産代理は平均7人が1件の取引を奪い合っている計算になる。業界では今後、不動産代理全体の人数は10~ 20%縮小するとみている。利嘉閣地産などは最悪3分の1の人員削減を考えているという。不動産代理業を監督管理する地産代理監管局が発表した統計では、5月末現在の不動産代理ライセンスを持つ個人は3万7016人で、4月末に比べ0・42%減。過去10カ月の増加傾向から減少に転じた。

 曽長官は公式ブログで6月23日、昨今の住宅取引の落ち込みが不動産代理業界の収入に影響を及ぼしていることに理解を示しながらも、不動産バブルを座視して崩壊を招けば香港経済に影響が及ぶと指摘。健全な不動産市場に戻すことが不動産業界と香港全体の長期的な利益につながると説明している。特区政府は今、ソフトランディングに向けて正念場を迎えているところだ。

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